Takram緒方壽人氏が執筆した「コンヴィヴィアル・テクノロジー:人間とテクノロジーが共に生きる社会へ」をとおして紹介されたERATO川原万有情報網プロジェクトを担う研究者たちとの議論と並行して、コンヴィヴィアル・テクノロジーが描く未来の姿を、言葉だけでなくヴィジュアルイメージとしても表現できないかと考え、「Convivial Future」と題された映像作品を制作した。本書各章の扉絵は、いずれもその映像作品のワンシーンが使用されている。

緒方壽人氏と映像作家の橋本健一氏らと共に、コンヴィヴィアル・テクノロジーの軸となるコンセプトを共有しながら、執筆と同時進行で「ありえるかもしれない」未来のサイドストーリーを綴っていった。

あらすじ
物語の主人公は、インフレータブルモビリティpoimoである。この世界でpoimoは、街中のステーションから取り出して膨らませて使うシェアモビリティとしての役割を担っているが、今より少しだけ自律的に考え行動する自由を持っている。
ある日、poimoは乗っていた人が残していった忘れ物に気付いて持ち主探しの旅を始める。もちろんシェアモビリティとしての役割も果たしながら。そして、その旅の途中、poimoは他のモノたちとの出会いを通して、光や、色や、音といった新たな環世界を獲得し、また自然の生き物たちからも生き物らしいふるまいを学んでいく。旅を通して、単なるモビリティという道具から、人間や自然と共に生きる存在へと成長していくのである。
また同時に、poimoが旅をする世界も、都市と自然、晴れと雨、昼と夜のあいだを移り変わっていく。わたしたちは、いろいろなリズムの中でバランスをとりながら生きて/生かされているのだ。
作品の各シーンには、都市スケールからヒューマンスケールまで、やわらかいテクノロジーが自律的に動いている日常の1コマ、人々がコンヴィヴィアルに集う公園や建築物、自然の中で環境から生まれ環境に還るモノたちなど、万有情報網プロジェクトで実際に行われている研究に着想を得たモノたちもさりげなくいろいろなところに散りばめられている。ぜひウェブサイトで公開している映像を見てみてほしい。
もちろん、コンヴィヴィアル・テクノロジーの先にある未来は一通りではなく、今回描かれた世界はその「ありえるかもしれない」未来のひとつの可能性に過ぎないし、本書で考えてきたことのすべてを表現できたわけでもない。もしもっと違う未来があると感じたなら、ぜひあなたも自分が思い描くコンヴィヴィアルな未来をつくり、表現してほしい。未来はあなたの手でつくることができるのだから。

Creative Direction: Hisato Ogata (Takram)
Story Scripting & Movie Direction: Kaz Yoneda (Bureau Principal-in-Charge), Hibiki Yamada (Bureau Associate)
Animation & Computer Graphics: Kenichi Hashimoto, Yuto Kanke, Mamino Nakajima
Music & Sound Effects: Noriyuki Sato (Heima), Makiko Sato (Heima)
この未来思索的コンセプトムービーは、ERATO川原万有情報網プロジェクトの各研究領域の先端テクノロジーとそれ等を牽引する研究者たちの想いを基に製作されている。